アウト*サイダー

 私は両親からの甘い空気に鳥肌が立った。時折、この人達は娘の存在を無視してこういう空間を作り出す。せめて娘が居ない時だけにしてほしい。

「……ん? 彼氏って言ったか?」

 咳が止まったお父さんがこっちに顔を向ける。

「あら、ちゃんと聞いてなかったのね。ハスミの彼が遊びに来るって」

 お父さんからの視線に気づかないふりをして席に座る。今日の朝食は雑穀米にお味噌汁、そして良い色に焼けた鮭の切り身。あと近所のクリーニング屋の村田さんからお裾分けしてもらった漬物も出てきた。

 毎年、夫婦で京都旅行に行っており、色んな漬物を業者のように買い付けてはそれをお裾分けしてくれる。出されたのは千枚漬けだった。私の一番好きな漬物だ。

「ハスミ……彼氏が出来たのか……いつの間に……っ」

 悲壮感を漂わせる父に、母が「大袈裟よ、今すぐ嫁入りする訳でもなしに」と笑えば、更に顔色を暗くさせた。

 数日前、ケイから「お家に遊びに行っても良い?」と言われて、二つ返事で了承し、お母さんとお父さんにも言った。

 その時、ちょうど二人は店を閉めて晩酌している最中で、あまりお酒に強くないお父さんは顔を真っ赤にさせていた。大方、お母さんが面白がって飲ませたのだ。と、いってもお猪口に二杯、三杯注いだだけだろうが。
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