アウト*サイダー
「初めまして、お義父さん、お義母さん。娘さんとお付き合いさせていただいている宮永慧です!」
定休日で暖簾を下げている店の入り口から入ってきた彼の声がよく響いた。
カウンターに座る私と母、カウンター越しに立っていた父。私達の視線を浴びても、ケイはその爽やかな笑顔を崩さない。
「あらぁ! まぁまぁまぁ!! どっかのモデルさんか俳優さんかと思ったわぁ。あ、暑かったでしょう? ほら、入って入って」
口を開けたまま喋れないでいる私とお父さんを置いて、お母さんがぱたぱたとケイの元に寄る。
「ありがとうございます、お義母さん。これ、美味しいと評判の菓子なので、ぜひ召し上がって下さい」
完璧なスマイルは、キラキラと眩しいくらい輝いている。彼から手渡された紙袋には老舗和菓子店の名前があり、お母さんの声がより高くなった。
「本当に……スーツで来たんだね」
真夏の炎天下の下、彼はスーツを着て、ネクタイまでして来たのだ。それなのに、暑苦しく見えるどころか、同じ高校生とは思えないほど、よく似合っていた。
細身のスーツは彼の長身をより目立たせ、学校では寝癖がついていようがお構い無しだった髪も今は整髪料で整えられて、母の言った通りモデルみたいだ。
「どう? 似合う?」
私の方へ顔を向けたケイが側に近付いてはにかむ。不意打ちの笑顔は、いつもと違うスーツ姿と相まって、私に悩殺級の胸キュンをくらわした。