アウト*サイダー
いや、待て待て。これじゃあ、まるで結婚の申し込みに来た的なやつじゃないか!
もはやケイの手中に落ちた母は彼の背中を押して、私の隣の席に座らせていた。
黙ったままでいる父は、まさかの展開に思考停止状態に陥っていて動けなくなっている。そんな父の肩を、カウンターの中に入ってきた母がバシッと叩く。
「お父さん、しっかりして! 外は暑かっただろうから冷たいお茶出してあげないと」
「あ……あぁ……そうだな」
やっと動き出したお父さんが奥の厨房にある冷蔵庫へと向かう。
「すみません、気を遣わせてしまって」
絵に描いたような好青年っぷりに、私は負けじと疑いの眼差しを送った。
「ん? 何、ハスミ」
氷の入ったお茶を出してくれたお父さんに愛想良くお礼を言って受け取った彼が、私からの視線に気づいて微笑む。
「やぁね、ハスミったら。ブサイクな顔して。それにしても、こんな素敵なボーイフレンドがいるなら、もっと早く知らせてくれても良かったのに。あ、お土産、本当ありがとうね。ここの羊羮好きなのよ。今冷やしてるから後で食べましょう? お昼御飯はもう食べた? 何か食べたい物はあるかしら? 何でも作ってあげるわよ」
よくもまぁ、こんなに喋れるものだ。
隣のお父さんが、空になったケイのコップにお茶を注いで「少し落ち着きなさい」とお母さんにもお茶を出した。