アウト*サイダー

 私も飲みかけだったお茶を飲み干して、両親のやり取りを笑って聞いている彼の横顔を見つめる。首筋を汗が伝っているのに気付く。

「ケイ、二階の部屋に行こう。そっちの方が涼しいから」

 ブーブー私に文句を言うお母さんと、物言いたげな顔のお父さんを無視して、ケイの腕を掴んで立たせた。

 これ以上、つまらない夫婦漫才を見せ続ける訳にもいくまい。

「良かったのかな、置いてきちゃったけど」

 階段を上がって私の部屋に入り、扉を閉める。あらかじめエアコンを付けておいたから部屋の中は冷えている。

「大丈夫、気にしないで。それより、その上着脱ぎなよ。暑いんでしょ?」

「脱がしてくれる?」

 期待のこもった彼の目を睨む。さっきまでの好青年の仮面は早くも剥がれたらしい。目を細くして「自分でしろよ」と無言で圧をかける私に彼は肩を竦めて上着を脱いだ。

 クローゼットから使っていないハンガーを取り出して振り返ると、彼はキョロキョロと部屋を見渡していた。

「そんなに珍しい物なんか無いと思うけど?」

 クローゼットとベッド、勉強机、ほとんど漫画で埋まっている本棚があるだけの、ごく一般的な部屋だ。面白い物なんかないはず。

 彼の手から上着を受け取ってハンガーにかけ、それを窓の所にあるカーテンレールにかけた。

「うわ、今の夫婦みたいだった!」 
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