アウト*サイダー
子供みたいにはしゃいでそう言ったケイが「ネクタイも!」と外したそれを渡す。背伸びして大人しく笑うケイも良いけど、やっぱり顔をくしゃっとさせて笑うケイも好きだな。
ネクタイを受け取って、外した時に襟が立ってしまっていたのを直してあげる。
「手のかかる旦那さんね」
どうせ余裕そうに笑って返されるのだとばかり思っていたのに、顔を上げて見た彼は予想外に口をつぐんで、顔から耳まで赤くなってしまっていた。
そんな反応されるとは思ってなかった私まで恥ずかしくなって、彼から手を離して一歩距離を取った。
「て、適当に座ってて。飲み物、取ってくる」
今更なんだけど、部屋に二人っきりって色々とヤバいのではなかろうか。招いておいて本当、今更何言ってるんだって感じなのは分かっている。
でも……まぁ、漫画読みに来ただけだし。変に意識したらケイも居心地悪いよね?
そうだ。何もヤバくない。ヤバくなんかない。意識するな。しちゃ駄目だ。
「ハスミ? ネクタイ握り締めて何してるの?」
リビングで立ち尽くしていた私の背後からお母さんに声をかけられて、心臓が飛び上がる。
「へっ!? あ、ああ、うん。何でもない。飲み物取りに来ただけ」