アウト*サイダー
最後の方はケイが泣いてしまうんじゃないかと思うくらい切ない声だった。
「ケイは何でそんなに私に泣いてほしいの? どうして?」
触れても良い所なのか、恐る恐ると聞く。
「だって……泣くのは感情が満たされているから泣くんだよ。俺は、ハスミを俺で満たしたい。俺の為に泣いてほしい」
ネクタイから手を離して、私からも離れていく。彼の手が力なく床に落ちた。
「悲しい涙じゃなくても良いってこと?」
俯いていた彼が顔を上げる。
「嬉しくても泣いちゃうよ? 実はね、この間、プールに行った日、ケイが電話してくれたじゃない。その時ね、泣いてはないんだけど、泣きたくなっちゃったの」
黙ったまま、私をぼんやりと見つめるケイの手を握る。
「その時は何でか分からなかった。でも、今、ケイが言ってくれた言葉で、あぁ、嬉しかったんだなって分かった」
“感情が満たされているから泣くんだよ”
「私のくだらない話しを聞いてくれて、優しく相槌を打ってくれる。それだけですごく嬉しい。他の誰でもなく、ケイだから嬉しいの」
「それだけのことで?」
納得のいかない顔で下を向く。私は彼の頬を両手で包んで顔を合わせた。
「それだけで良いんだよ。好きって、欲張りだけど、意外とそれだけで満たされているもんだよ」