アウト*サイダー

 私はセットされた彼の髪をぐちゃぐちゃに掻き回した。

 ケイは抵抗しようとするけど、頭を激しく振られて目が回っているみたい。

 私が手を離せば、いつものケイだ。

 ボサボサになった髪に手をすき入れて、そのまま頭を引き寄せる。触れ合った唇はいつもより強張っていた。

「でもね、欲張りだからすぐに足りなくなっちゃうんだと思う。私達、まだお互い分からないこともあるし、足りてないことに気付けないから、足りなくなったら我慢せずにちゃんと言い合おう」

 まだ、ぼうっとしているケイ。伝わらなかったのかと心配していたら、彼の手が私の腰に回り、そっと抱き締められていた。

 何だろう。抱き締められる、というよりも、抱き付かれたと言うべきか。私の肩に顔を埋めてすりすりと擦り付ける。

 おっきな赤ちゃんみたいで、広い背中をよしよしと撫でてあげる。

「もう足りなくなったんだけど」

 下から上目遣いするケイ。何が足りないのかと問う私に、怪しい光を持たせた目を細めた。

「これが足りない」

 ネクタイがぐいっと引っ張られ、気が付けばケイに口を塞がれていた。驚きすぎて目を閉じるのも忘れる。

 まったく、本っ当に……このケイの裏表か何なのか知らんが、切り替えにはついていけない!
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