アウト*サイダー
彼は不意に何かのスイッチが入ったように不安になったりする。
数分前まで笑っていても、ケイは私が離れることに怯える。嫌いにならないでと懇願する。
それは、私と同じなのだろうか。
彼の目にわたしが綺麗なままの姿で映っていたいと願う事と。
過去を知られることが怖くて、好きなのに、彼を信じているのに、汚い私を知れば離れていくに決まっているとネガティブになってしまう。
「ケイ……ケイも、私を嫌いにならないで。私が嫌いな私でも、嫌いにならないで」
なんて自分勝手なことを言っているんだろう。
「ハスミは、何が嫌いなの?」
私の顔にかかった髪をかきあげて、彼が聞く。
怖くて、思い出したくない声がどこからか聴こえる。自分の意思に反して体が震え出す。
言わなきゃいけないのに、うまく息が出来なくなって、私の異変に気付いたケイがぎゅっと体を包み込んだ。
「ハスミ。俺がハスミを嫌うことなんてない。大丈夫だよ。大好きだから」
彼の胸に顔を押し付けて息をする。たったそれだけで気持ちが落ち着いた。汗をかいていたからだろうか、普段よりも彼の匂いが強くて、頭がクラクラもした。
「あ……汗、臭くない? 俺、今日すごい汗かいたから」
遠慮がちに訪ねたケイは、私の肩に手を当ててさりげなく離れさせようとする。私は彼の背中に腕を回し、ぴったりくっついた。
「臭くない。ケイの匂い、好き」