アウト*サイダー
困ったな、とぽつりと呟いた彼が頭上で大きく深呼吸する。胸が上下して、耳を当てると、鼓動が速く鳴っていた。
私も肺一杯に息を吸う。吐き出した息は熱い。それがかかったケイは僅かに身動ぎ、深かった呼吸が浅くなっていた。
「ケイ?」
どうしたのかと顔を上げた私の目を、彼が手で覆い隠した。一瞬だけ見えたケイの表情は何かを堪えるような切ない、苦しそうなものだった。
「ちょっとだけ待って」
その言葉通り、目を閉じて待つ。
肩にかかる重み。彼の息は火傷しそうなほど熱くなっている。お互いが触れた所全部に熱が籠って、蕩けてしまうのではと思う。
暫く経って「もう平気だよ」と言い、囲まれていた熱が解かれた。
目の前にあるのは優しい笑顔。それを少し残念がるのはいけないことなのかな。
私は優しい彼にその安心を求めていた。けれど、いつの間にか、それだけじゃ満足できなくもなっている。
「俺にハスミの全部を教えて?」
あぁ。私も、普段隠している彼の暗い部分を見せてほしいんだ。
「うん。私の全部、あげる」
誰にも打ち明けられなかった“あの日”のこと。あれからまとわりついて離れない恐怖。私が嫌いな私。
全部、ケイに知ってほしい。