アウト*サイダー
イツキの事に関して話すのは予想以上に辛かった。
私自身、まだ彼に与えられたトラウマの中に囚われているのだと痛感して、私をやるせない気持ちにさせた。
友人だと信じていた私。友人だとも思っていなかった彼。
両者の思い違いはきっと、どこかで見え隠れしていたはず。なのに、あの日、私が何の疑いもなくイツキの部屋に行き、二人きりになったのが駄目だった。
屈託なく笑うイツキの顔を全てだと思い込んでいた私の体を押さえてのしかかった彼は、全然知らない人の顔をしていた。
必死に抵抗して、捲りあげられたシャツを押さえるのが精一杯で、掴まれた足の間に感じた強烈な痛みに叫ぶことも出来なかった。
あの日の記憶は断片的にしか思い出せない。
カーペットに染み付いた血と、私の名前を呼びながら追ってきた手。気付いたら、どこか知らない公園のベンチで蹲っていて、偶然通りかかったお巡りさんに「迷子になった」とへらへら笑っていた。
くしゃくしゃになった制服と充血した目。お巡りさんは、それとなく「何かあった?」と尋ねてくれたが、私は何も答えなかった。
もちろん、イツキを庇った訳ではない。ただ、現実を受け止めきれなかった。スカートについた血を洗い流そうとしても取れなくて、自分でクリーニングに出した時も「生理の血がついた」のだと、半ば思い込むようにして嘘をついた。
家族にも、いつも一緒にいたトクラにも、未だに話せていないのは、無理矢理された体になった私を知られたくなかった。“そういう”目で私を見てほしくなかった。