アウト*サイダー
「これはダメ?」
今度は首筋に唇を這わせ、先程と同じ、鎖骨の所で止めてケイが顔を上げる。
「ダメ、じゃないかも」
彼の口角は元々きゅっと上がっているけれど、それを更に上げて「そっか」と嬉しそうに笑う。そんな彼を見て私は嬉しくなる。私がケイを喜ばせてあげれているんだと。
すると、私の着ているTシャツの首元、Vネックのギリギリの所に唇を付けた。それを少しずつ下にずらしていく。
わざとなのか、はむはむと唇を動かすから妙にくすぐったくて、しかも、吐息が肌にかかって声が漏れ出た。
「可愛い声」
ケイが私との距離を詰めて座り直す。私の左手は繋いだまま、反対の手を私の腰に添えた。
「じゃあ、これは?」
Tシャツの裾から彼の手が入る。キャミソールを着ているから直接肌に触れてはいない。けど……
「……止めてっ」
制服のシャツを捲し上げ、体に這った骨張った手を思い出してしまった。
「分かった」
すぐに手を引っ込め、安心させるように私の額にキスをして、目を合わせてくれた。私は申し訳なさに目が熱くなった。
「ごめんね、ケイ」
「何にも悪くない。ハスミは頑張ってくれてるよ」
彼が私の頭を寄せて背中を撫でる。私は彼の肩に寄りかかって目を拭った。
扉の向こうで「羊羮切ったんだけどいるかしら?」とお母さんの声がした。ケイが私の顔を覗き込むと「ヤバイな。その顔は俺が疑われる」腫れた目に深刻そうな表情を向ける。
「後で良い!」
扉に向かって大声を出した私に、ケイは声を堪えて笑っていた。