アウト*サイダー
「彼氏に浮気された。それで、ふっ……もう、一周回って可笑しいんだけど、私がキレたら何故か逆ギレされて、そんでこれよ」
自虐的に自身の口を指差す。
「いやぁ、なんか、悪いね。私が誘っておいて、こんな顔だし、暗い話しちゃって」
よく見ると、赤くなった目を濃いアイメイクで隠していることに気付く。
「ちゃんと、その人とは別れたの?」
心配そうに眉を寄せるハルちゃん。篠田さんの手に自分の手を重ねる。彼女は笑って、でも、瞬きをして流れ落ちた涙が引き金となって、咽び泣いていた。
「シノ、彼氏の家にほぼ同棲してるみたいな感じで。今は私の家に避難してるんだけど、向こうは別れたくないの一点張り。殴ったのも興奮してて仕方なかった。もう二度としないって土下座までしたらしいけど……あれは、もう駄目だよ」
喋れない篠田さんに代わって須賀さんが話してくれる。最後は彼女に言い聞かすように呟いていた。
殴ってまで相手にすがり付くのはどうしてなんだろう。好きなら、そんなことしないんじゃないのか、と考える私は夢見がちな子供なのか。
それに、篠田さんの家族は何とも思わないんだろうか。帰ってこない娘に。傷付いて避難する場所が自分の家じゃないことに。
「シノの親は俗に言う毒親だから。私はこいつを家に帰すつもりはないし、クソ彼氏にも渡さないよ」