アウト*サイダー

 さっきのカフェとは比べ物にならない騒音。二階建てのゲームセンターで、一階はクレーンゲームやメダルゲーム、スロット等があり、二階は十機以上のプリクラが所狭しに並び、パウダールームもある。

 化粧直しがしたいという篠田さんの要望で来た……はずなのに。

「スガっちゃん、そのライナー取って」

「ん。ねぇ、ハルルにはこのピンクのチーク似合うと思わん?」

「あ、分かる。ブルベだもんねぇ、ハルル。ハスミンも色白だけど、あえてチークせずに、真っ赤なリップで強めなイメージが良くない?」

 私とハルちゃんはそれぞれ、篠田さんと須賀さんに化粧させられていた。二人の会話を聞いていても理解が追いつかない。

 買ったばかりの化粧品をべりべり開封しながら、目を閉じろ、口を開けろ、と様々な指示を出す。

 ハルちゃんは慣れているのか、大人しくしているようで「ハルル偉いね」とか「可愛いよ」とか滅多に聞かない声で須賀さんによしよしされている。

 一方、私は迫り来る篠田さんの手に恐怖を感じて、閉じちゃいけない時に目を閉じたり、その逆だったり、慣れなさすぎて「じっとしてなさい!」と篠田さんに叱られた。

「ハスミちゃん、私が教えてからメイクした?」

 順調に進んで化粧をし終えたハルちゃんからの視線が痛い。そして、初デートから一回も使っていない化粧品が机の引き出しに仕舞われたままでいる罪悪感に心が痛んだ。
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