アウト*サイダー
「カフェオレが……」
無いだとぅっ!?
……落ち着け、ハスミ。そんなはずない。
チルド飲料が並んだ棚に一列だけ、ぽっかり空いてしまっているけれど、とにかく落ち着け。
私はスッとその場から離れた。店内をぐるっと回る。そうしてまた同じ棚に戻ってくる。
「……やっぱし、無い」
あー、無いかぁ。今から他のコンビニとかスーパーに行くのは面倒だ。今飲みたいのに。今すぐ飲みたいのに!
何も買わずに店を出るのも気が引けて、隣にあった、大して飲みたくもないヨーグルト飲料を手に取ろうとした私の側に現れた影。
音もなく近づいた人物に、私はビビって肩を飛び上がらせた。振り向けば、そこには背の高いコンビニ店員が居た。
なんだ、最近入ったノッポ君か。
ノッポ君は背が高いのに猫背で、眼鏡をかけているが、それを髪の毛が覆い隠しているので、ちゃんと前が見えているのか疑問だ。
彼は私の方に無言で手を差し出す。その手には、私が好きなカフェオレがあった。
「もしかして、私に?」
彼がコクンと頷いた。いつも来る度に買っていたから覚えていたのだろうか。
「……ありがとうございます。でも、もうこんな事しないで下さい」
言った途端、表情が見えなくても落ち込んでいるのが分かった。そりゃあ、私だって人の厚意は素直に嬉しいし、これは勿論買わせてもらうけども。
「これを飲みたい人が私以外にいたかもしれないのに、あなたがそうやって私の為に最後の一つを残しておいたら不公平でしょう?」