アウト*サイダー
おそらく、これは彼なりのお礼なのだとは思う。
ノッポ君を初めて見かけた時、うちの店の常連さんが酔っ払った状態で怒鳴り付けていて、心配になった私が二人の間に入った。
常連のおじさんはレジでタバコを買おうとしていたらしく、けれど酔ってて呂律が回らなくて、ノッポ君は番号を聞き取れなかった。
それに腹を立てたおじさんが「俺がいつも買ってるやつを出せ」と言ったが、バイトに入ったばかりだった彼にはそれも出来なかった。
この話をおじさんから聞くのも苦労した。
私はおじさんが店でよく吸っていたタバコの銘柄をノッポ君に教える。すると、彼は迷いなくタバコを渡してくれた。
番号じゃなくて銘柄で覚えているのかと、感心させられる。何となくイメージではないけど、大学生くらいに見えるし、自身もタバコを吸っているんだろう。
満足して帰っていったおじさんを見送って、私もカフェオレをレジに置く。彼はほんの小さな声で「ありがとう」と言った。
その日から、彼とは特段仲良くすることもないが、挨拶をすればペコっとお辞儀を返してくれるし、「今日も暑いですね」とレジで会計する時に話しかければ頷いてくれる。
彼がこんな風に私を特別扱いするとは思いもしなかったけれど、日頃の感謝的なものか。まぁ、それなら普通に喋ってほしい。彼は基本喋らないから。