アウト*サイダー
すぐ隣で黙ったまま俯くノッポ君。何だか、変に罪悪感を抱いてしまうから勘弁してよ。
「で、でも、嬉しかったですよ。飲みたいと思ってたのに無くて、めちゃめちゃテンション下がってたんですけど、店員さんがサプライズみたいに持ってきてくれて復活しました」
何をペチャクチャと一人で喋ってるんだか。
あはは、と愛想笑いする私に、ノッポ君は軽くお辞儀してレジへ戻っていく。
その後ろ姿に既視感があって「あの!」と呼び止めた。振り返ったノッポ君は、いつもと変わらず、どこをどう見てもノッポ君でしかなかった。
「あ、いや……本当、ありがとうございました」
一瞬、ケイかと思った。
ちょっと猫背気味なところとか、襟足から覗く綺麗な首とか、広い肩幅とか。
……考えてから、自分のキモさに辟易した。彼に会いたくなったからって、他の人に重ねて見るとは。ノッポ君に失礼でしかないではないか。
いきなり謝ることも出来ず、心の中で土下座した。それから、いるかどうかは知らないが、ノッポ君の彼女さんにも。
ふっ、と鼻で笑ったような音が聞こえた気がして辺りに目をやる。
私を入れても客は三人だけ。雑誌コーナーにいる若い兄ちゃんと、レジで会計をしている子連れのヤンママ。レジにはノッポ君と双子のような店員さん(ノッポ君もそうだけど、彼は眼鏡しか印象的なものがない)が立っている。
誰かが笑ったのかと思ったのだが……?
ノッポ君は俯いたまま突っ立っていて、少しだけ顔をこっちに向けると、聞き取れるギリギリの声量で「戻らなきゃ」ぽそりと口を動かした。言外に、いつまでお前の相手をさせるんだ的なものを感じ取る。
慌てて謝った私に、彼は軽く頭を下げて戻って行った。