アウト*サイダー

 須賀さんのご両親はアパレルブランドを経営しているらしく、お母さんの美佐代さんがデザイナー、お父さんが社長なのだそうだ。

 しかし、友達の両親のことを名前やあだ名で呼べるとは。相当仲が良いからなのか、それとも、ただ怖いもの知らずなのか。

 だって、お父さんは社長さんなんだよ?

 え、じゃあ、須賀さんは社長令嬢ってこと?

「これから、お嬢って呼んで良い?」

 もちろん、私は社長令嬢として呼ぶ。決して、任侠ドラマなんかで屈強な男達に頭を下げられる娘さんの方ではないよ。

「ハスミンの、そういうバカっぽいノリ、嫌いじゃないけどウザい」

「こんな顔のスガっちゃんがそんな呼び方されたら、本気にする人絶対出てくると思う。だって、タイガーの人相も、どう見たって堅気の人間に見えないもん」

 私とハルちゃんの頭に浮かんだ顔は、おそらく同じようなものに違いなかった。

「さ、ほら、くだらない事言ってないで化粧落として風呂屋に行く用意しな」 

 家の近所に、スーパー銭湯があるらしい。天然温泉にサウナ、岩盤浴ができると言うので、早く行きたくてウズウズする。

「露天風呂もあるよ」

 座椅子から立ち上がり、私を手招きしながら篠田さんが言った。

 ソファを降りて彼女の元に行く。彼女が座っていた座椅子に座らされ、篠田さんは須賀さんから受け取ったメイク落としと書かれた容器を上下に降って、コットンにそれを染み込ませる。

 楽しみで浮かれる私。彼女もニコニコと笑って「はい、ハスミン、目閉じてー?」閉じきっていなかった私の目にコットンを近付けていた。

 私の断末魔が轟き、一悶着あったのは言うまでもない。
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