アウト*サイダー

 止めよう。今日は水曜日だし、何も予定はない。ケイから連絡が来るまで大人しく待っていよう。

 メッセージの“名前を呼んで”の所まで順調に消していく指。連打するのが面倒になって長押しして消そうとした。そう、確かに、削除ボタンを押した。だから、私は何が起こったのか理解出来なかった。

 消していたはずのそれが一瞬にして消え、その代わり、歯の浮くような言葉たちは画面の中に送られていたのだ。

 サァーっと血の気が引いていく音が、まるで実際に聞こえたような気がした。

 事態を把握した私の喉は、言葉が一気に押し寄せてきて渋滞してしまう。日本語も喋れなくなった私は咄嗟に携帯をベッドに叩きつける。

 ……どうしよう。

 え、本当にどうしよう!?

 どうすれば良いの? 待って、待ってよ。こんなの見られたら私、もう彼に会わせる顔なんてないんだけど。

 はっ! そうだ。消せば良いんだ。そうだよ、見られる前に取り消してしまえば良いだけ。

 ふぅ。もう、取り乱しちゃって。みっともないな。落ち着くのだ、ハスミ。さて、早速メッセージを消そう。

 やれやれ、と肩を竦めて、携帯を拾い上げた。それとほぼ同時に鳴り響く着信音と、画面に表示された名前に私の心臓が暴れ狂い、手に持っていたそれを再び投げていた。

 ベッドでなく床だったならば、私の携帯は間違いなくご臨終となっていたことだろう。
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