アウト*サイダー
着信音が鳴り止む。無意識に自分の身を守るように肩を抱いていたのに気付く。深呼吸をして腕を下ろし、そして、うつ伏せて沈黙している携帯をひょいとひっくり返す。
またもタイミング良くかかってくる電話。
このまま出ないでおこうか、とも思ったけれど、ただただ履歴が溜まっていくばかりで、それこそ、彼をいじけさせるだけだ。
余計な事は考えず、無心になって通話ボタンを押した。携帯が急に重く感じて、手が震えている。
「もしもし?」
声はどうにか震えているように聞こえていないと思う。
『ハスミ』
嫌になるほど聞いたアナウンスではなく、彼の声だというだけで胸が一杯になった。
『……そんなに、俺に会いたい?』
笑いを抑えたように言った彼。その顔が容易に想像出来て、腹立たしい事この上ないのに、私は「うん」と馬鹿みたいに返してしまった。
彼も予想していなかった返事だったのか、電話の向こうで口をつぐんでいる。
「ちょっと会えないだけで、声が聞けていなかっただけで焦って、こんな普段しないことしたり……なんか可笑しいよね」
さっき送ったメッセージも恥ずかしいし、彼からの電話で舞い上がっているのも恥ずかしい。膝を抱えて、目を閉じる。耳元で彼の呼吸が聞こえた。
『そうかな?』
「え?」
『可笑しくなんてないし、寂しいって、会いたいって言ってくれて、俺はすごく嬉しかったよ』