アウト*サイダー
「そうなの? 新たな恋が始まりそうだと思ったのに」
ちょっと残念がる私に物言いたげな顔が向く。まるで私を分別のつかない、注意しなければ何をしでかすか分からない奴だと決めつけているようだ。
「お節介もほどほどにしなよ」
ほらね。
「言われなくても分かってますよ」
自分の自転車の前まで来て鍵をつける。周囲には私達以外、誰もいない。だけど、いつ先生が来てもおかしくない状況だ。体育館にいないことに気付いて探しに来るかもしれない。
やっぱり皆を説得して戻ろうか。いや、でも、戻りたくないしな。
自転車を出したまま、ぼんやりと考え込んでいたら、ケイに名前を呼ばれた。それも耳に息がかかるくらいに間近から。
肩を飛び上がらせて振り向いた私に、ケイが軽い溜め息を吐いた。
「……ほんとに分かってるのか」
「何が?」
彼の言いたい事が分からなくて首を傾げたが、また溜め息だけして私から自転車を奪って乗ると後ろの荷台を叩いて、そこに座るように促した。
私は腑に落ちないという顔をしながら彼の後ろに座る。そして彼のお腹に腕を回す。その手から彼が小刻みに震えているのが伝わって、私も笑いながら「もう、何?」と尋ねる。
「ううん。ハスミのその素直さが好きだな、と思っただけ」
「あら、どうも」
走り出した自転車。前を向くケイに無愛想な返事をしても、顔が見えなくても、多分触れている所から私の気持ちは駄々漏れだ。だって、ケイが嬉しそうに笑ってるから。私もつられて笑ってぎゅっと抱きつく。
校門で皆が待っていた。狭く開けられた門の向こう側で。