アウト*サイダー

* ほんの少しのズレ



 五時間目の授業が始まって静かな廊下を慎重に、そして緊張しながら(何せ授業を遅れたことなんてなかったから)進んでいき、自分のクラスに辿り着く。

 意を決して扉を引くと、予想通りにクラスメートの視線が。それから黒板に向かっていた教師が振り向き、まじめくさった表情で「田口……お前がサボるなんてどうした」とため息混じりに言った。

 小さな声で「すみません」とだけ返し、席に着く。

 それで終わりにしてほしかったけれど……

「成績も良いほうだし、授業態度も。いつも真面目だったのに……何か悩みでもあるのか? 俺はいつでも相談に乗るから」

 中年太りで丸く出たお腹、薄くなった頭をむくんだ手で掻き、いかにも生徒思いで良い教師の面を被る現代文の笹岡先生。

 苦手な先生だ。

 曖昧な返事しかしない私に、同情的な視線が注がれる。いい加減にしてほしい気持ちで一杯になっていたら……

「あ、センセー。昼休憩の時、ハスミンにトイレに行くから遅れるって伝言頼まれてたの忘れてたわー」
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