シンシアリー
遠ざかるレティシア姫の後姿を見送りながら、言葉にできない今の想いを、ユーグは黒くつぶらな瞳で伝えた。
そのとき、クラスの輪に向かって歩いた姫が、ふり向いた。
まだ自分を見送ってくれているユーグに、なぜか護られているよう気がした姫は、彼にニコッと微笑むと、再び、クラスの輪に向かって駆けて行った。

・・・あの時初めて会った10歳のユーグと、4年前に見た15歳のユーグは、どちらも「少年」という言葉が似合っていたのに。今日再会したユーグは、筋骨たくましく格好良い「青年」に変貌していた。
ユーグは確か私よりも5歳年上だから・・19歳。だったら、「青年」という言葉が当然似合うわよね。微笑む顔には「ユーグ少年」の面影が少し残ってるけど。単なる社交辞令だと分かっているけど、私のために一時時間を割いてくれて嬉しかった。
何より、また、あなたに会えて嬉しかった。今後は本当に、ベイルさんのお家で会えることを願ってる。だって私は、またあなたに会いたいと思っているから・・・。

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