シンシアリー
興奮して頬をバラ色に染め、ヘーゼル色の瞳を輝かせながら活き活きと話しているレティシア姫を見ながら、父親のゼノス大公は、賢い娘から褒められたことにくすぐったい喜びを感じていた。
偽りや世辞でない、姫の本心の言葉であることが、ゼノスにも分かるからだ。
しかし、レティシアが「ですが」と口を開いたとき、満面の笑みは消えて、真剣な顔になっていた。
ヘーゼル色の瞳には、相変わらず力が宿っているように、きらりと光って見える。

「お父様。時は流れています。時が流れる分だけ、時代は進んでいます。アンドゥーラは小さな国であるのと同時に、四方全てが他国とつながっています。わが国よりも約2万倍もの土地を持つ大国が、小さな国を自国の領土とするために“本気”を出して攻めてくれば、たちどころにアンドゥーラという小国はなくなってしまうでしょう」
「ではどうしろと言うのだ。今より軍事力を強化するか?それとも国境警備隊の数を増やすか?」
「いいえ。いくら現状より軍事力を強化しても、アンドゥーラの国と民を護ることにはなりません。何より、アンドゥーラは軍事国家ではありません。そうでしょう?お父様」

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