シンシアリー
「絹は蚕の繭からとれる。そして蚕はクワを食餌とする」
「成程」
「しかしですな、大公殿。万が一でも絹が取れたとして、その後はどうされるのですか?第一、この国の誰も、どのように絹を育てるか知らないでしょう。そんな中で一体どうやって絹産業を発展させることなどできるのですか?そのような大胆過ぎる“案”など、所詮は大公殿の夢物語に過ぎない。非現実的過ぎる!」

貴族院議員の中でも最年長であるウィードン子爵が、まっさきに反対意見を述べたことに、ゼノス大公は、その端正な顔に、思わず苦笑を浮かべた。
「非常に保守的な」意見である事も含めて、全てレティシアの予想通りに事が進んでいる―――。

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