シンシアリー
「・・・絹製品は希少品。故に価値が生まれる。そして絹製品は上流階級の者たちが好んで身に着ける。つまり十分な需要があるということだ。加えて、絹製品には限りない可能性がある。私はアンドゥーラ公国の国土を拡大する気などない。ミニ国家でいいのだ。しかし、ミニ国家でも武力以外の力で、小さな国土と、そこで暮らす民たちの平和を護る必要がある。私はアンドゥーラを軍事国家に変えたくはない。武力で他国を制圧できたとしても、最終的には孤立するだけだろう。それより、蚕を育てて絹をとり、そこから我が国ならではの絹製品を創り出す技術を身につければ、小さな国土のまま、皆で生き抜く“力”、そして愛国心が生まれるのではないかと思うのだ。結果、国も豊かになり、民もより暮らしやすくなるだろう。変化を受け入れることは、時に恐怖を伴う。しかし、“現状を維持すること”は、言い換えれば“変化を受け入れる”ことだ。一見、何も変わっていないように見える物事も、時を経れば変わっているもの。つまり・・・」

『今が変わる時なのです』

< 119 / 365 >

この作品をシェア

pagetop