シンシアリー
サイモン・ラザラス子爵は、貴族院議員の中で一番、オーストワイクとウェストワイクの事情に詳しいこともあり、国を追われたオーストワイクの絹職人とその家族、総勢20名を受け入れることから、彼らの住処の確保等については、ラザラス子爵に一任された。
最終決定は、もちろんゼノス大公が下すが、いわゆる現場責任者兼監督は、ラザラス子爵である、ということだ。
ラザラス子爵は、彼の三男・ナサニエルの協力を仰いだ。というのも、ナサニエルの方から「養蚕業に関わりたい」と申し出たからだ。

子爵の長男・ダンカンは、父のあとを継いで貴族院議員になるだろう。
現在、南部国境警備隊に所属している次男のジョエルは、このまま騎士で在り続ける様子。
末っ子であるナサニエルは、将来何になるかは分からないが、少なくとも騎士と議員にならないことだけは分かっている。
彼は政治に興味がない代わりに、商才はあるようだ。
養蚕業に興味を持ったのも、きっと将来性があると見越してのことだろうと、子爵は考えたのである。

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