シンシアリー
ヘルメースは、アンドゥーラの国内外の情勢はおろか、公邸の内事情すら知らない。知ろうと思わないからだ。
よってヘルメースは、レティシア姫の数々の「陰躍」も、もちろん知らない。
もっとも、これらに関しては、全てが「ゼノス大公の功績」となっているため、ヘルメースが知らなくても仕方がないことなのだが・・・。

・・・何故、この僕が勉強などしないといけないのだ?
哲学を学んで一体何になる。過去の出来事を知って、一体何の役に立つ!
そんな、どうでも良いことなど知らなくても、僕は大きくなったら大公になるんだ。この国を支配できるんだ!
僕は、勉強なんかしなくても、次期大公になることが約束されているんだ・・・。

「何もしなくても、自分が次期大公になることは約束されているのだから、勉強もする必要はないのだ」と、はき違えた解釈をしている限り、ヘルメースが進んで勉学に励むことはないだろう―――。

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