シンシアリー
「うむ。しかし、だ。レティシア程の賢さと、国と民を想う気持ちがヘルメースにもあればとつい思ってしまうのは・・・やはり私のエゴイズムであろうな。主が先にも言ったように、人は皆、独自の個性を持っておるのだからな。姉弟だからといって比較をしては・・・やはりそれは、親としてしてはならぬ事よな。私はまだ幼い息子に、過剰な期待をかけすぎているのかもしれぬ」
「大公様のお気持ちは分かりますよ」
「・・・レティシアが男子であったら・・・私もここまで悩まずに済んだのかもな」
「父上」
「へッ、ヘルメース!いつからそこに!?」
「いつって、今ですが」
「そうか・・・。まあ入りなさい」
「はい」
まだ12歳ではあるが、年齢以上に尊大な雰囲気を醸し出しているヘルメースは、無表情のまま、一歩ずつ歩を進める。
そのたびに、緋色の絨毯を踏みしめる靴音が、コツ、コツと小さく鳴り響いた。
「大公様のお気持ちは分かりますよ」
「・・・レティシアが男子であったら・・・私もここまで悩まずに済んだのかもな」
「父上」
「へッ、ヘルメース!いつからそこに!?」
「いつって、今ですが」
「そうか・・・。まあ入りなさい」
「はい」
まだ12歳ではあるが、年齢以上に尊大な雰囲気を醸し出しているヘルメースは、無表情のまま、一歩ずつ歩を進める。
そのたびに、緋色の絨毯を踏みしめる靴音が、コツ、コツと小さく鳴り響いた。