シンシアリー
「私がですか」
「ああ。騎士長官の主ならば適任であろう」
「・・・分かりました。大公様のご命令とあれば、お受けするしかないでしょう」
「指導の程、頼むぞ。セイヴィアー」
「御意」
「では僕はこれで。ベイルさん、明日からよろしくお願いします」
「はい、公子様」

執務室に入ったときと同じように、室を出たヘルメースは、数歩歩いたところで立ち止まった。
その顔は憤怒に満ちており、握られた両手は、怒りでワナワナと震えている。
室の扉が開いていたため、先程ゼノス大公がため息交じりについ漏らしてしまった心の内を、壁越しではあったが、ヘルメースはしっかり聞いてしまっていたのだ。

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