シンシアリー
「・・・おまえは女だ」
「だから?」
「次期大公になるのは、この僕だ」
「知ってるわ」
本当は怖がっているはずなのに、冷静を装うレティシアを見て、ますます苛立ったヘルメースは、「ムカつくんだよ!」と叫んで、レティシアから唐突に手を離した。
そのときヘルメースは、レティシアを少し後ろに押したこともあって、レティシアはよろめき、ドンと尻もちをついてしまった。
その拍子に、レティシアが持っていたバッグの中身が、外にこぼれ出てしまった。
「何とも無様で滑稽な姿だな。あ、ね、う、え・・・あ。これもらうよ」
「あっ」
「ちょうど失くした所だったんだ」
「それは・・・」とレティシアが呟いたときにはもう、ヘルメースは何事もなかったかのように、踵を返して歩き出していた。
ここで引き留めてしまったら、より酷い仕打ちを受けてしまうかもしれないと思ったレティシアは、ヘルメースの方へ向かって思わず伸ばしていた右手を、力なく落とした。
「だから?」
「次期大公になるのは、この僕だ」
「知ってるわ」
本当は怖がっているはずなのに、冷静を装うレティシアを見て、ますます苛立ったヘルメースは、「ムカつくんだよ!」と叫んで、レティシアから唐突に手を離した。
そのときヘルメースは、レティシアを少し後ろに押したこともあって、レティシアはよろめき、ドンと尻もちをついてしまった。
その拍子に、レティシアが持っていたバッグの中身が、外にこぼれ出てしまった。
「何とも無様で滑稽な姿だな。あ、ね、う、え・・・あ。これもらうよ」
「あっ」
「ちょうど失くした所だったんだ」
「それは・・・」とレティシアが呟いたときにはもう、ヘルメースは何事もなかったかのように、踵を返して歩き出していた。
ここで引き留めてしまったら、より酷い仕打ちを受けてしまうかもしれないと思ったレティシアは、ヘルメースの方へ向かって思わず伸ばしていた右手を、力なく落とした。