シンシアリー
庶民的な姫を衝動的に追いかけて
「カレン。学校を止めるって聞いたけど。本当なの?」
「ええ。でも今すぐというわけじゃないのよ。多分、半年後くらいに・・・はい、できました」
「ありがとう、カレン」

横髪を後ろで1つに結ぶのに使っていたレティシア姫の赤いリボンが斜めに歪んでいたのを、姫の学友であるカレン・ヴァン・ホウテンは見つけると、パブの席に着くなり、すぐさま結び直してくれた。
流行に敏感で、とてもオシャレなカレンは、何かと姫に世話を焼きたがるのだ。
因みに、皆が集まっているのはパブだが、今はまだ夕方前の時間なので、夜の酒場のような賑わいはなく、閑散としている。

「何故止めるの?あと1年半も勉強すれば、学位は取れるのでしょう?」
「そうなんだけど・・・。私、婚約したの!」
「まあ!」

レティシアは、思わず組んだ両手を胸元に当てながら、「おめでとう!」と言った。


< 137 / 365 >

この作品をシェア

pagetop