シンシアリー
「ところで。姫様にも来てるんでしょ?」
「何がですか?」
「縁談話」
「あぁ」と他人事のように言ったレティシアは、「いいえ」と言ってニッコリ微笑んだ。

「えっ!一見も無し!?」
「ええ」
「本当に!?」
「皆無ね」

本当は、レティシアが15歳を過ぎてから、彼女に縁談話が舞い込み始めたのだが、父親のゼノス大公は、自分の「隠れた片腕」であるレティシアのことを、まだまだ手放す気にはなれなかったため、片っ端から断っていたのだ。
彼の妻であるアレッシアに話せば、またああだこうだと難癖をつけてきそうなので、全てゼノスの「独断」で行っていること。
中には良い条件を出してくれている外国の王家からの申し出もあるのだが・・・これは、ゼノス以外の誰も、もちろんレティシア本人も知らない話なのである。

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