シンシアリー
・・・今、姫様に触れてはいけない。人の気持ちを敏感に推し量ることのできる心優しい姫様のことだ。俺の想いが絶対バレてしまう。
だが、ここで姫様とあっけなく別れたくない・・・!

「・・・公邸までお送りします」
「え。いえ、結構よ。私、自分で馬に乗ってきたし。ということは、腕はそこまで痛くないということを意味して・・」
「姫様」
「あら。ベイルさん」
「父上」
「ユーグ」

屈強な体つきをした父子は、何となく互いを牽制し合うように挨拶をした。
ユーグの方がセイヴィアーより頭半分程背が高いが、男親である威厳を醸し出しているセイヴィアーは、年季の入ったいかつい顔で、ユーグをしかと睨みつけている。
対等な「威嚇ぶり」だ。

< 149 / 365 >

この作品をシェア

pagetop