シンシアリー
「今日は絹工場の方へは行かなくてもよろしいのですか？」
「ええ。さしたる進展はなかったとナサニエルが言っていたから。週明けにでも行こうと思っているわ」と弾む声で話をしているレティシアとセイヴィアーの後姿を見送りながら、ユーグは二人の仲を羨んでいた。
自分の父親であるセイヴィアーが、自分よりもより多く、そしてより良くレティシアのことを知っていることに対して、軽い嫉妬すら感じたくらいだ。
もちろんその嫉妬心は、恋敵という意味で湧いたものではない。
ゼノス大公よりも年上であるセイヴィアーが、レティシアの結婚相手になるはずがないと、誰もが分かっているし、彼らは互いのことを、そのような目では見ていないことも明らかだ。
何よりセイヴィアーは、レティシアのことを、自分の娘のように気にかけて愛情を注いでいる。そしてレティシアは、セイヴィアーのことを心から信頼している。
二人はそういう絆で結ばれているのだ。

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