シンシアリー
だが、ユーグにそのような振る舞いをすることは許されない。
いくら実力があり、人気者である立派な騎士であろうとも、父親のセイヴィアーが騎士長官という役職に就いていようとも、所詮ユーグは一端の騎士に過ぎない。
そんな一端の騎士が公家の姫に深入りすることなど、許されないこと―――。

・・・強く、逞しく、そして凛々しいユーグは、国境警備隊の中でも大変な人気者だ。特に、年頃の女性たちに。
よく考えてみれば当然のことよね。だってユーグは、誰もが認める立派な騎士なのだから・・あ!いけない!
3年半前の何時か、不快に思うことを言ってしまったか、失礼な振る舞いをしてしまってごめんなさいとユーグに謝ること、忘れてた・・・。
またユーグに会えるかしら。偶然でもいいから、また会えると良いな・・・。

だからそのとき、レティシアが、セイヴィアーと話をしながら、頭の片隅ではこのようなことを思っていたことは、ユーグも知らなかった。

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