シンシアリー
「・・・それでね、縁談話はまだ一度ももらったことがないと言ったら、皆とても驚いていたわ」
「それはヘンねぇ。姫様程の器量と美貌に加えて高い知性の持ち主ならば、縁談話は今頃ひっきりなしに来ているはずだと思うのだけど」
「確かに、言われてみればそうだな。姫様の縁談話は、公邸内でも噂になったことがないし・・」
「だから皆無なのよ」

セイヴィアーはまだ解せなかったが、別に気にすることなくあっけらかんとしているレティシアを見ていると、それでもいいかと納得することにした。

「姫様は将来何かやりたいことでもおありなのですか?」
「そうね・・・世界地図を自分の手で描いてみたいという野望はあるわ」
「成程。姫様らしい」と言いながら、セイヴィアーはクスクス笑った。

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