シンシアリー
「そうね。もし外国の王家あたりに嫁ぐことになったら、機会はあるかもしれないわ。お父様だって、その辺りの“外聞”は計算していると思うし」
「姫様がお嫁に行かれるということは、ザッハルト家を出るということになる。だから外国の高貴な家柄に貴女様を嫁がせることで、それなりの“箔”を保つということですか」
「ええ。それかいっそのこと、未婚のまま様々な外国へ旅することを許してくれるかも・・ううん、許してくれるというより、放任して・・・くれないかしら」
「う~ん。どうでしょうね。私が姫様の父親なら、心配でたまりませんよ。姫様は賢くても非力な女性なのですから。姫様はとても華奢な体型をされているのだし・・そう言えば。姫様はここに来る前、腕がどうとか、息子に言っておられましたね」
「あぁ。それはもういいの。大丈夫なのよ」
「お出かけになられる前、公邸内で何かあったのですか?」
「え?何故・・」
「姫様を見かけたのです。あの時声をかけようと思ったのですが、少し時間を置いた方が良いかと思い直した次第で」
「そぅ」

・・・だからベイルさんは、今日、私を夕食に招待してくれたのか・・・。

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