シンシアリー
ゼノス大公は、このとき初めて「レティシア」という存在がここにいると気がついたように、幼い娘をまじまじと見た。

・・・初めて我が子に「欲しい」とねだられた物が、まさか「羽根ペン」だとは!
しかも、普段は大人しく、いつも図書室に隠れている4歳の娘が、今、この私をしっかりと見返しながら、自分が欲しいと思ったものを、ハッキリと私に主張している・・・。

ゼノス大公は大いに驚き、戸惑いを隠すことができなかったものの、アンドゥーラ公国では一般的に使われている雁(がん)と白鳥の羽根ペンの他に、高級品と言われるフクロウの羽根ペンも、レティシアに買い与えた。
これはゼノスの、娘に対する父親としての愛情の表れであり、そしてレティシア姫の本質に気づいた瞬間でもあった。

・・・もしかするとこの娘(こ)には、賢者並みの頭脳が備わっているのかもしれぬ・・・。
< 17 / 365 >

この作品をシェア

pagetop