シンシアリー
近隣諸国の貴族たちからは「その見事な質感と美しさは、(当時珍重されていた)青い薔薇(ブルー・ローズ)にも匹敵する」と評され、世界一の大国・ブルマン帝国のエリザベス・パノヴァ女帝が、とある晩餐会で、アンドゥーラ・ブルーの生地をふんだんに使ったドレスを着用して以来、上流階級の中でも、特にご婦人たちがこぞって手に入れるようになり、やがてその現象は、徐々に世界中へ広まっていった。

レティシアの思惑通り、小さな国土しかないアンドゥーラ公国は、絹という製品を使って自ら流行を作り上げ、それを世界に発信することに成功したのだ。
一つだけ、レティシアに思い違いがあったとすれば、「ここまで来るのに“少なくとも”4年はかかる」と思っていたことだろうか。
実際は、3年10ヶ月で、ここまで来たのだから。

そしてその頃に、アンドゥーラ公国で、一つめの凶悪殺人事件が起こった―――。

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