シンシアリー
「娼婦惨殺事件」は、あっという間に国中の民を震撼させた。
アンドゥーラ公国が建国されて以来、初めてこのような酷い事件が起こったことに、ゼノス大公は、控えめに言っても「心を痛め」て、「哀悼の意を尽くす」ために、身寄りのなかったこの被害者の娼婦の葬儀を執り行ってあげた。

だが、惨殺事件はこれで終わらなかった。
それから3週間後。
今度は西部にある娼館で働いている身寄りのない中年の娼婦が、前回と全く同じやり口で惨殺された。
さらに1週間後、今度は南部で一人暮らしをしている中年の未亡人が、同じ手口で殺されたのだ。
ゼノス大公は、早急に手を打つべく、貴族院議員を招集し、緊急議会を開いた―――。

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