シンシアリー
「ちょっと!」
「はい、公妃様」
「公子を見かけなかった?」
「公子様ですか?いえ。見かけておりませんが。お部屋にいらっしゃるのでは・・」
「・・・そう」

公妃に何か言いつけられるのは面倒だと思った女中は、アレッシアに一礼をすると、素早く歩いて行った。

・・・あの子は部屋にいなかった。とすると、出かけた・・・?

すぐに裏庭の方へ歩いたアレッシアは、そこでヘルメース公子を見つけた。
アレッシアが「ヘルメース!ヘルメース!」と何度も名を呼んだことで、ヘルメースも気づいたのだろう。歩を止めた。

「ヘルメース!」
「何?母上」
「あのっ・・・・・・」

< 176 / 365 >

この作品をシェア

pagetop