シンシアリー
「セイヴィアー。愛情とは、親が子に、父親が娘に与える愛情とは、どういうものなのだろうか」
「愛情というものは目に見えないものです。だから目に見えるよう、表現すれば良いのでは?」

セイヴィアーと呼ばれた男は、涼しげな顔でジンを飲んだ。
ため息交じりに問いかけるゼノスとは対照的である。

「それは分かっておる!分かっておるが、具体的にどうすれば良いかが分からぬから、こうして悩んでおるのだ。主も具体的に解決策を申せ!」
「好きならば好きだと表現すれば良いだけの話でしょう。そんなに難しく考えることはないと思いますが」
「だから例えば!」
「抱きしめる、とか」
「ばっ馬鹿者!相手はもう赤子ではないっ!しかも女子だぞ!そんなことをしても良いと思っておるのかっ」

頭に血を登らせ、カッカしているゼノス大公に、セイヴィアーは「まあまあ落ち着いてください、大公様」と冷静な顔と声で言った。
いまだにこの二人は対照的な姿である・・。

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