シンシアリー
「ベイルさんが・・亡くなったことは、私の母が亡くなったときよりとても・・・悲しい。なんて。こんな風に想うことは、不謹慎かしら」
「そんなことはありませんよ、姫様。だって姫様は、貴女のお母様よりも父上と一緒に過ごした時間の方が多かったのですから。近しい人を亡くしたときの悲しみ具合は、血のつながりに関係ありません。それより姫様、ちゃんと食べてますか?少しばかり体重が落ちたようにお見受けしますが」

気づかう表情と労わる口調から、自分のことを心から心配してくれているのが十分伝わったレティシアは、ユーグに微笑みながら「ありがとうユーグ」と言った。
しかし、レティシアの笑みはとても力なく、そして彼女はユーグの“質問”に答えなかった。

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