シンシアリー
・・・あの時と同じだ。初めて姫様と会った、あの時と・・・。

自分よりも小柄で華奢なレティシアなのに、彼女が発する力強い存在感に圧されたユーグは、握った右手拳を逞しい左胸に当てながらピシッと直立した。
正式な騎士の挨拶ポーズである。

「これより我(われ)・ユーグ・ベイルは、レティシア・ザッハルト姫君を我が主(あるじ)とし、生涯主に忠誠を尽くすことをここに誓います。ある時は主の盾となり、またある時は主の剣となり、あらゆる危険から主を護り抜くことを、ここに誓います」

「唱え句」を述べ終えたユーグは、右手拳を左胸に当てたまま、レティシアに敬意を表して頭を下げた。

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