シンシアリー
俺が姫様を護り抜く！
「具合はもう良いの？ヘルメース」
「ああ。何日も寝たおかげで腹が空いたよ」
「まあ。ヘルメースったら」

鶏肉の丸焼きを手で持ちながらかぶりついているヘルメースを微笑ましい様子で見ながら、母親のアレッシアは、意味もなくホホッと笑った。

「でも。あのときわたくしは雨が降ると言ったのに、剣の稽古をしに行くなんて。ちょっと軽率だったわね」
「・・・顔に・・」
「え？」
「顔に当たる雨が気持ち良かったよ。全身がずぶ濡れになって、それはもう・・爽快だった！全部洗い流せたし」

“そのとき”―――つまり、セイヴィアーや他の女性たちを殺したとき―――を思い出しているのか。
どことなく恍惚とした表情を顔に浮かべているヘルメースを見たアレッシアは、息子に対してある種の不気味さを感じてしまった。

・・・いけないっ。わたくしったらまた、この子を疑うような目で見てしまって・・・。

自分の気持ちを打ち消すように、目の前にある焼かれた鶏肉にフォークを突き刺し、ナイフで切ろうとしたアレッシアだったが、急激に食欲が失せたため、鶏肉を食べることく、フォークとナイフを皿の上に置いた。

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