シンシアリー
「でも、量り違えたとしたら?ヘルメースがわざと実際の力を隠していたとしたら・・・ベイルさんが“油断”してしまう可能性だってあり得るわ。それか、ベイルさんはヘルメースに恐れをなしたのかもしれない。実は私・・あの子の目つきを見ていると、時々背筋がゾッとするの。さっきだって・・・。あの子が私を嫌っていることは十分承知しているわ。でも、私を殺したい程憎んでいるとは・・と思う一方で、あの子だったらそれくらいやりかねないと・・・」
「姫様・・・」

ユーグは、レティシアの眉間に触れていた自分の指を、彼女の首に移した。
そこにはまだ、ヘルメースにつけられた指痕が痛々しく残っている。
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