シンシアリー
・・・私には「長官」という肩書がある。しかしそれは「まとめ役」を体良く言い換えただけ。自分にはそれだけの実力はあるし、適役だとも思っているが、別にそんな肩書など無くても良い・・・。

国や国民を護るためには時に命を懸けても構わない覚悟はできているが、国を統治することや、それにまつわる世辞や社交、損得を考えながらの駆け引き―――つまり政治―――には、全く興味がなかったのである。
だからこそゼノス大公は、セイヴィアーが公邸に来ると、決まってジンをふるまい、他愛のない世間話をすることを楽しみの一つにしていた。
大公として、妻にも、誰にも見せることができない「弱さ」を、セイヴィアーには見せることができた。愚痴をこぼすこともできた。
いつも飾らず正直に、冷静な目線で物を言う、自分より下の階級で年上のセイヴィアーのことを、ゼノス大公は心から信頼していたのである。
ゼノスにとってセイヴィアーは、実在しない「兄」のような、頼れる存在だった。

< 24 / 365 >

この作品をシェア

pagetop