シンシアリー
公邸内に勤める召使たちの半数以上が、「姫様の嫁ぎ先に同行する」と申し出ていたことは、レティシアにとって、正直嬉しい驚きだった。
しかしレティシアが、「私はもうザッハルト家を出るのだから」と彼らをどうにか説き伏せて、結局皆、これまでどおり公邸で勤め続けることを受け入れたのは、ゼノスたちにとっては助かったと言える。

レティシアは、見送りに来てくれた大勢の国民たちに手を振って応え、そして学友たちには一人一人握手をしながら「ありがとう」と言った。

「姫。ご結婚、おめでとうございます」
「ありがとう、ナサニエル」
「これを」とナサニエル・ラザラスは言いながら、手に持っていた「ガガーリアン戦記」をレティシアに渡した。

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