シンシアリー
レティシアは、シクシク泣いているコンスタンティンを抱きしめた。
「貴方はもう、独りではない」と分からせるために。

「・・ごめん、レティシア。こんな・・ことに、あなたを巻き込んで、しまって・・・」
「どうか謝らないでください。この結婚は、私自身が望んだ事でもありますから。確かに、結婚生活を送ることは無理がありますけど、貴方の仰るように、友人として共に過ごすことはできます。だから国王様。私のことは信頼してください」
「・・・だったら、今後より僕のことは、コースチャと呼んでほしい」
「はい。分かりました。但し」とレティシアは言いながら、コンスタンティンの顔を覗き込むようにじっと見た。

そして、コンスタンティンの涙で濡れた頬を指で優しく拭いながら「公式の場では、国王様とお呼びします」と言った。

「たとえ10歳であろうとも、貴方は国王なのですから」
「うん・・分かった」

レティシアは、9つ下の幼い国王に対して、自分が護らねばという強い保護本能に駆られていた。
そしてユーグも、自分に対してこのような気持ちを抱きながら、影となり、日向となって、いつも護ってくれているのだろうかと、頭の片隅でふと思ったのだった。

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