シンシアリー
「だからあなたのせいでカサンドラは死んだのよ」とでもアレッシア現公妃に言われたのであろうと、セイヴィアーには容易に想像がついた。
セイヴィアー自身は実際耳にしたことはないが、アレッシアがレティシアを言葉でなじり、いびっているのは、公邸内に勤めている者たち、そして公邸によく出入りする者たちには良く知られた事実なのである。

「しかしながら。人は皆、いつか必ず死ぬのです。どう生きてどう死ぬか、お決めになったのは神ではなく、貴女のお母様だと私は思います」

・・・お母様が、決めたこと・・・。

セイヴィアーの言葉が、少しずつレティシア姫の心に染み入ったのだろう。
ヘーゼル色の姫の瞳には、涙がまだ少しだけ溜まっていたが、悲しみでいっぱいだった顔に微笑みが浮かんだのを見て、セイヴィアーはホッと安堵の息をついた。

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